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パテ・クルート世界選手権2019&フランス研修レポート

投稿日:2020年2月4日

昨年12月2日、フランス・リヨンで開催されたパテ・クルート世界選手権2019に出場した塚本選手(見事 世界チャンピオン)と左近シェフは現地の研修先を二人ともアジア大会の審査委員長を務めたアルノー・二コラ氏のレストランを選びました。
お二人の貴重な体験をレポートでご紹介いたします。

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塚本 治選手のレポート | 左近 陽平選手のレポート

塚本 治選手のレポート

パテ・クルート選手権大会が開催されたレストラン「セルシウス」は、リヨンの中心街に立地しており、普段はとても開放的で美しいレストランです。しかし、12月2日、の大会当日、この日ばかりは大会前の熱気が入口まであふれていて、私も入口に到着した時にはその空気感に思わず武者震いをせずにいられませんでした。
私は大会前に心を落ち着かせ、街の空気に慣れる意味でも余裕をもってリヨン入りしました。今回このように当日のレポートをお話する機会をいただきましたので、現地でのスケジュールを下記の通り紹介申し上げます。

◆11月27日夕方
フランス「シャルル・ド・ゴール空港」より、TGVでリヨンに向かい、ヴィエンヌにあるレストラン 「ラ・ピラミッド」に到着。
◆11月28日
リヨンで食材調達。自分自身でマルシェなどを周りながら、実際に手に取り香りや感触を確かめながら、改めて本場の食材の豊かさに触れる度に、言葉では表現できないほどの高揚感が沸いてくるのを感じる。
◆11月29日~12月1日
「ラ・ピラミッド」の調理場を拝借しパテ・クルートの仕込みを開始。
これまでの大会はパテ・クルート3本であったが、今回は4本持ち込みとのこと。
会場も広く錚々たる審査員の方々に召し上がっていただくため、様々なことを想定し予備を準備しておいたほうが良いと考え、計5本のパテ・クルートを仕込む。
◆12月2日 大会当日。
・10時30分に会場入り。若手のためのパテ・クルートコンクールの表彰式に参加。
・15時30分 準備開始
選手はコックコートに着替え、決勝が始まるまでインタビューや集合写真、順番決め、細かいルール説明を聞く。盛り付け会場には長机が4台並べてあり、後は盛り付けのお皿が並べられているのみ。まもなく世界中から集まったシェフたちがこの真っ白いお皿に各々の魂がこもった“パテ・クルートの華”を咲かせるのかと思うと緊張感と同時に、この大会を存分に楽しみたいという気持ちがあふれてきた。
・16時00分 大会開始
10分間隔で選手はスタート。大会の様子は大型モニターでライブ中継されていた。
その映像からも今回の大会がこれまで以上にハイレベルであるということが伝わってきた。制限時間は30分で、その時間内にアンティエ1本を盛ったものを1台、審査員試食用を15皿、関係者試食用を10皿、計25皿用意するのが今大会のルール。(ガルニチュールは点数には反映されない。)
私の調理順は11番目。自分が持ち込んだ食材の荷ほどきからスタート。お皿は想像していたよりも小さかったので瞬時に盛り方を変え、制限時間1分前で盛り終わり最終チェックまで行い、手渡しで切りたてのパテ・クルートをサービスに渡すことが出来た。荷ほどきから審査員に召し上がって頂くまでの時間配分と段取りを予めシミュレーションしておくことが大切だということを改めて感じた。盛り付けを終えた後はインタビューを受け、控室に移動した後は選手同士でコミュニケーションを図ったりしながら、皆でリラックスした時間を過ごした。
・19時 結果発表
再び会場入り。パテ・クルート協会の入会式、総評が行われた後、いよいよ大会の順位が発表。私の名前が呼ばれ、優勝を告げられた瞬間、一斉に周りからの祝福の拍手と共に壇上へ導かれた。両手で支えなければならない程の重い優勝トロフィーを手渡された時、この重みは応援してくれたみんなの想いなのだと感じた。
会場は700人を超える観客、関係者で盛り上がっていた。表彰式の後は、パーティーが始まり選手達のパテ・クルートやシャルキュトリーなどのフランス料理がブッフェ形式で振る舞われ夜の12時頃まで続いた。

以上、大会の様子を紹介いたしました。
今回の世界大会で最も大切に考えていたこと、それは自分の拘ったパテ・クルートを審査員にどう伝えられるかどう表現するか、その一点に集中することでした。アジア大会からずっと同じ気持ちで臨んでまいりました。その結果優勝させて頂き、自分の思いが伝わった事が大変嬉しく思っております。

世界大会後の研修先はポコ会長のお心遣いで、アルノー・ニコラシェフの下で学ばせて頂きました。ブッチャー作業を主にスペシャリテでもあるパテ・クルートなどを仕込み、アルノーシェフの拘りにも触れられ、素晴らしい経験、勉強の機会となりました。渡仏中はポコ会長をはじめパトリック・アンリルーシェフ、沢山の人々が支えてくださり、無事に帰国する事が出来ました。
最後になりますが、この度の世界選手権に送り出してくださった、セルリアンタワー東急ホテルの宮島総支配人をはじめ福田総料理長、応援してくれた同僚の皆さまのご支援、ご協力のおかげでパテ・クルート世界選手権2019での優勝という光栄に恵まれたと思っております。また私を技術的にも精神的にも支えてくださった方々への感謝の気持ちでいっぱいです。
これからはこの経験を活かして、自分自身のさらなるスキルアップとともに、後進の指導育成に力を注ぎ、フランス料理ならびにセルリアンタワー東急ホテルの発展に貢献していきたいと思っております。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

セルリアンタワー東急ホテル タワーズレストラン「クーカーニョ」 塚本 治

左近 陽平選手のレポート

今回自身にとって初めてのパテクルート世界選手権の出場にあたり、戸惑いや不安もありましたが、多くの貴重な経験をさせていただきました。
アジア大会は4度目のチャレンジで、今までの反省を活かし、より美味しいパテクルートを作りたいという一心で取り組みました。先輩や上司のアドバイスを頂きながら、自身の作品の練習を重ねて挑みました。その結果、第2位と世界大会の出場権を頂くことができ、チャレンジし続けて本当に良かったと思っています。
フランスでは、MOFシャルキュティエのアルノーニコラ氏のご協力を頂き、食材の調達やアトリエをお借りして本選用の作品を作成とシャルキュトリでの研修をさせて頂きました。日頃の業務ではあまり触れることのない下処理前の肉やその仕込みの量の多さに圧倒されました。フランスの食材や現地での処理の仕方などを日本とは違う環境での仕事を目の当たりにし、そこから多くのことを学ぶことができました。
フランス本選の作品を作成する上で、慣れない環境に仕込みがスムーズにはいかなかった面もありましたが、最終的には自信をもって出せる作品ができました。結果として入賞はできませんでしたが、ずっと目標にしていたアジア代表での世界大会に出場ができ、私にとって貴重な経験となりました。日本シャルキュティエ協会をはじめ、会社、フランスでお世話になった方々や関係してくださった多くの皆様のご指導、ご支援を賜り、無事にコンクールへの出場ができましたことを心より感謝申し上げます。また世界の舞台にチャレンジできるよう精進し、パテクルートやシャルキュトリの知識を深めてより多くの方に魅力を伝えていけたらと思います。

びわ湖大津プリンスホテル 左近 陽平